思考の足あと

何を考え、感じていたのか。

have gone

卒論発表も終わり、卒業を待つだけの身となった今日この頃。と言っても結局修士まで行くので、まだ続くのだが。

 

勿論学部で卒業してしまう人とはもうお別れだというのに。青春が死んでいたおれからすれば、大学生活は唯一残された希望の春だった。倒木から新たな命が生まれるように、朽ち果てたおれの青春はもう一度色をつけて蘇ったのだった。今まで全く打ち込んだことのなかった勉強と、サークル活動、バイト…そのどれも新たな経験で新鮮味を帯びていた。家に帰るとがらんとした9畳の部屋、今までと違った家の匂い…慣れない料理と、コインランドリーまでの往復。最初はどこにあるか分からなくてだいぶ遠いところまで行っていたな。ナルトが置いてあったっけ。

しかし今までの空虚な人生に比べて、おれは密な時間を過ごしすぎたように思う。共に過ごしてきた仲間が、遠くへと旅立つのだ。人生の一部となったそれらはもう手の届かないところへ行ってしまうだろう。

おれは中学のとき、卒業式で泣く子を心の中で嘲っていたと思う。どうせまた会えるのに。なんて馬鹿みたいに思っていたんだ。

たしかに、頑張れば会えるかもしれない。新幹線と飛行機を乗り継いで君の元へ行くことは出来るかもしれない。でも、現実的なコストを考えてきっともう合わない。会えたとしてもこの空間はもう二度と戻ることはない。きっと、彼女らはこんな想いを抱えていたのだろう。どうしようもなく崩れ去ってしまう何か。俺にとってのそれは心地の良い空間であって、青春のやり直しであって、最後の猶予期間だった。

こんなに彩度の高い感情でさえ、いつしか輪郭がぼやけていって霞んでしまうことが怖くて。僕らがいた場所のことを、一切の欠落無く覚えておくことは無理なのだ。

 

きっと僕らの象徴となる旗を掲げて、またねと送り出すことさえ出来ないんだろう。こういうのはなあなあに最後を迎えてしまうものだ。

 

これから会う事の無い人達へ、どうか貴方達の歩む先に幸福の有らんことを