思考の足あと

何を考え、感じていたのか。

乾杯しようぜ

瓦解していく塔を見ていた。エントロピーの増大。気を抜くと全てのものはこうなって、混ぜこぜの静寂だけが残る。

立ち込める砂埃が、まるでその運命から逃れたいかの様に四方八方へ散っていく。当然あたしらもそれに呑み込まれて、仕方ないから目の上に避けてたゴーグルをずらした。

あいつはそんなもの持ってないマヌケだから、あたしが覆い被さった。だから日頃からもうちょっとものを持ち歩けと言っていたんだ。

長い間離れていたはずなのに、こうも自然に体が動くのはちょっと嬉しかった。

ようやくあたりが落ち着いた頃、あたしは砂の中から顔を出して、あいつがさらにその下から出てくる。

お互いのマヌケな顔を見てちょっと経った後、堪えきれずに2人して笑い出した。

傑作だ!世界がひっくり返る!

あたしらがこれから教科書に載るねとか、なんで迎えに来れたのかとか、そんな話をした。いっぱい笑ったけど、最後にボロボロのムラサキが瓦礫の山から出てきてまた笑った。

太陽はあいも変わらず照りつけてるし、風も脇を通り抜けてしまうけれど、世界だけは確かに変わった。明日の朝には世界中に知れ渡って、ビックニュースになっちゃうぜ!そういえば、あたしのバイクは壊れちまった。まあこの出来事の前では些細な話だ。

 

一通り宴も済ませて落ち着いてきたときに、あいつがちょっと泣いてるのを見た。なんだよ、これ以上面白いことがあるかってくらいの日なのに泣くことがあるか!あたしはそう言ってやろうと思ってあいつの肩を掴んだけど、あいつの泣き顔を見てたらあたしもなんだか泣けてきて、とうとう泣いた。あいつに情けない顔を見られるのが恥ずかしかったのでバーカとかチビ!とか小学生かってくらいの暴言を言いまくった。あいつはそれを聞いて、反論もせずに笑いながら泣いてた。おかしな顔だ。

 

ーーきっとお互いは最後の夜だろうなあ、なんて考えていたんだ。