なにも知りたく無いのだ。自分の限界とか、他人の才能とか、そういったものがあることを知っていても、俺は自分の能力によって説明可能な世界の住人であって、異世界は見えてはならない。
今は何もかもが暴かれて、優しさのヴェールは切り裂かれてしまった。
何故そっとしておいてくれないのか。人は誰だってギリギリを生きたいわけじゃない。
俺に手を出さないで欲しいと願うけれど、唯一のアイデンティティは、傷痕を残す最悪の形で俺の元から奪い去られてしまった。
殻に篭りたいしどこか別のところへ行きたい。敗者には旅が似合う。尾を引いて残るのは長く留まりすぎてしまった弊害だろうか。